何かありそうなのであまり気乗りしない宮沢だったが、
依頼を受けてしまったからにはやらなくてはならない。
 かくして日野を1週間尾行して調査をしたが、特にそれといった行動はみられないどころか、
父親以外の男性と話しているのすら見受けられなかった。
それよりも気にかかるのは、大川との接触すらなかったことだ。

 恋人っていうのは嘘なんじゃねえのか……?

 宮沢は、自宅で毎日の調査報告書をまとめながら疑問に思う。
ふと、調査中に撮った1枚の写真に目がとまる。

「……やっぱりな」

 日野のマンションを外から撮影したものだ。
昼間に日野が自室に居た時間なのだが、天気が良いのにカーテンを締め切っている。

 ってことはつまり、他人に自室での様子や自室を覗かれたくないっつうことだ。
覗かれたくないと思うのは、覗かれたことで何かをされたと考えて間違いねえだろうな。

 宮沢は1週間の写真を見比べてみて確信した。
調査開始1日目は普通に昼間にカーテンをあけているが2日目以降は締め切ったきりだ。

 これと、大川のあやしさから言ったら……。


「もしもし、宮沢です」
『ああ、どうも、大川です。どうでしたか?』
「浮気の兆候はみられませんでしたが、最後の調査報告書をまとめましたので明日会えませんか?」
『ええ、大丈夫ですよ』

 宮沢は大川との約束をとりつけると
大川からの情報にあった日野の携帯の電話番号を見て、すぐに日野に電話をかけた。

『はい……』
「日野あずささんですね?
宮沢探偵事務所の宮沢秀介と申しますが……ストーカー被害にお困りではないでしょうか?」

 日野は電話口で言葉に困っているようだ。無理もない、いきなり知らない男からの連絡だ。
しかも今まさにストーカー被害にあっているであろう女性に
相談もされていないのにいきなり電話をかけて困ってるか、などと聞いているのだから。

「実は私、大川博人さんという方から貴方の浮気調査を頼まれたのですが、
どうも様子がおかしいのでお困りでしたら手助けをしたいと思いまして」
『大川さん……』

 日野はつぶやくように言葉をこぼす。

『存じている方ですが、
先月お会いして以来は全くお会いしていませんし……大川さんとはお付き合いしてもいないです』











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