14時丁度、ドーナツ店に入る。賑やかな雰囲気と甘い香りがただよう。 「いらっしゃいませー」 驚くほどの笑顔で店員に迎えられる。 「店内でお召し上がりですか?」 「はい。オールドファッションとコーヒーでお願いします」 「かしこまりました!」 宮沢は客席を見回しながら注文をする。 「会員カードはお持ちですか?」 店員の問いに反応してカードを渡すものの、目は客席を見回したままである。 「150円お返しです、ごゆっくりどうぞ!」 「ありがとうございます」 商品ののったトレーを受け取りながら店員に笑顔で礼をすると、 3段程の低い階段を下りて客席に向かう。 依頼メールで聞いた特徴をもとに依頼人を探すと、柱の後ろの狭いテーブルに男性が座っていた。 「失礼、大川さんですか?」 「ああ、はい」 「宮沢探偵事務所の宮沢秀介です。かけても?」 「ええ、どうぞ」 依頼人の大川は20前後の若い男だ。きっちりとスーツをきてはいるがどうにもガラが悪い。 目つきが悪く、手にはあざやら傷やらが目だつ。あまり健全な人間ではなさそうだ。 「さて、無駄話もなんですので早速詳しい内容をお伺いしたいのですが」 「ああ、はい。俺の彼女、どうも浮気をしているんではないかと思いまして」 丁寧なしゃべり口調にはしているが、俺と言っていたり……やはり違和感を覚える。 手帳と万年筆を取り出してメモをとる準備をする。 「彼女、お名前は?」 「日野あずさです。音大生で金持ちの」 まだ聞いていないところまで一気にしゃべるのでメモをとりずらい。 「年齢は?」 「20歳で、俺と同じです。とても」 「写真はご用意していただけましたか?」 「はい、これです。」 大川が次の言葉をしゃべりだす前に割ってはいる。 依頼メールの時点で彼女の写真を用意するよう言ってあったのですんなりと渡された。 しかし3枚渡されたものは全て隠し撮りで、大川と一緒に写っているものはない。 「参考までにお伺いしたいのですが、大川さんのご職業は?」 「ええ、印刷会社です」 「そうですか」 それからいくつかの情報をもらって、店をあとにした。 ←BACK NEXT→